お大師様のことば(九十三)
大正大学名誉教授・種智院大学客員教授
東京成就院長老
福田 亮成
お釈迦さまの呼び名の一つに
私達の人生にも、正しく生きる為の、御する人・柁の師が必要です。人間関係が極めて薄くなっている現在、強くその関係性を取り戻すことが大きなテーマとなってきているようです。考えてみますと自分が判断して行為することの多くは、
特に厳しいスポーツ界のアスリート達は、コーチの適確な指導のもと、理想とする先輩達の生きざまに、ことのほか感動し、そのように生きようと自己を励まし、それを導き手として努力し、すばらしい成果をあげている姿を見ることができます。まさしく、そのアスリートにとって、コーチ・先輩等は”御する人・柁の師”ということができましょう。毎日の新聞紙上にも、柁となるべき人がおります。長い人生の中で
とくに宗教にかかわる世界に生きている人にとって、それは決定的でありましょう。お大師様が僧侶の生活規範を述べた『
三世を達観するに、皆は是れ四恩なり、
と。そして
自然に一切の悪を離れて、一切の善を修し、自他の衆生を
とも述べています。四恩とは、父母・衆生・国土・三宝(仏・法・僧)のことであります。私を生んでくれた父母、私以外のすべての生きとし生けるもの、今生きている国、国土、そして仏教の教えの四つのお蔭のことであります。
六大新報 第四四一八号 掲載