お大師様のことば(七十一)
大正大学名誉教授・種智院大学客員教授
智山専修学院長・東京成就院長老
福田 亮成
仏教では、特に密教では、自心を深く探索するための瞑想を大切にいたします。そのために、自心をある対象にかけて安定させ、より深い世界へと
密教では、単純な月輪や、阿字等を前にして心集中をはかるのでありますが、確かに自心をみつめる方法としては、有効な方法であるにちがいありません。私も実践してみて実感するところであります。
大乗仏教の展開は、仏像の登場を促しましたし、菩薩思想の展開は、私達一人一人に菩薩の誓願がむけられるということは、確かに瞑想を通して受取られることからであるにちがいありません。
掲げました聖句は、諸佛護念とは、諸佛の悲願力をもって光を放って衆生を
私達には、すべての仏の側からの働きがけが恒になされている、ということが仏教信仰の源点であります。そのことをどのように受取ってゆこうとしているのかが問題です。心を静め、礼拝し、心集中をはかることこそが、仏との交流にとりまして重要な方法であります。入我我入、往来渉入とは、まさしくそのことの内証を云った言葉でありましょう。お大師さまが、密教を三摩地門といったことも、そこにあります。
六大新報 第四三六〇号 掲載