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お大師様のことば お大師様のことば

お大師様のことば(四十六)

大正大学名誉教授・種智院大学客員教授
文学博士・東京成就院長老
福田 亮成



 このコトバは、「綜藝種智院式」にあるものです。この式にはお大師さまの教育観がしっかりと論じられており、それは現在の大学教育にそのままの形で了解されるものです。特に、現在、仏教を建学の精神としてすえている仏教大学の傾聴すべきテーマが、すでに平安時代の初期におきまして喚起かんきされていることは重要であります。

 まず、お大師さまが考えられた人材養成のヴィジョンは、仏教の一つの宗でのそれではなく、広く一般社会に大きく視野を拡大させていることであります。

 お大師さまの時代には、諸宗、諸大寺で毎年試験を行って、一定数の人の得度を許す制度、即ち年分度者の制がありました。大同年間におきまして真言宗でも三名の年分度者が許されており、それがお大師さまの当面の教育する対象だったはずであります。そのような情況の中で、綜合大学の開講の為の趣意書を発表されました。その綜藝種智院式の内容は、次のように集約されるでありましょう。
一、国立大学に対しての私立大学の創設。
二、入学者の対象は、一般の人々に開放。
三、仏教学と一般の学問との綜合大学を意図したものであること。
四、教師も生徒にもすべて経費を給付する。

 ということであります。
“真俗離れず”ということの具体化が、ここに見られます。

 現代の日本の大学は、社会現象に一つ一つあわせて、その組織の改変を繰返しております。それを肯定する立場からは、展開ということができましょうが、疑問視するむきからは、学問体系の総崩れともいうことができましょう。

 今こそ、お大師さまの綜藝の精神を再考すべきであります。



六大新報 第四二九六号 掲載



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