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お大師様のことば(十三)
大正大学名誉教授
文学博士・東京成就院住職
福田 亮成
お大師さまは、延暦二十三年(八〇四)七月に入唐され、在唐すること二ケ年にして大同元年(八〇六)八月に無事帰国されました。そして、その帰朝報告として十月二十三日に『請来目録』を朝廷に奏進されました。掲げましたお言葉は、その中に述べられているものです。『請来目録』は文字通り「目録」ですが、二十四歳執筆の『三教指帰』の次作の著書とも云ってよいほどの重要なものであります。
ここでは、すでに完全に密教という立場を獲得していると云ってよいでしょう。即ち、顕教と密教との比較をとおして密教の特色を述べるものです。そのテーマは、成仏の遅速ということでありました。同じ『請来目録』に「心を顕教に遊ばしむれば
お大師さまが、恵果阿闍梨より授けられました潅頂ということは、ただたんに心の問題ではなく、ご自身の全存在にかかわるものであったはずであります。お大師さまの真情を思います。
六大新報 第四二一〇号 掲載