諸の弟子らに語(つ)ぐ。
およそ出家修道はもと仏果を期す。
あにいわんや人間(じんかん)少々の果をや。

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お大師様のことば お大師様のことば

お大師様のことば(八十三)

大正大学名誉教授・種智院大学客員教授
東京成就院長老


福田 亮成



 この言葉の反対は、「病人もし医人をののしり、方薬を信ぜず、妙薬を服せずんば、病疾びょうしつ何によってかのぞくことを得んや」ということです。お大師さまは、至極当然のことをおっしゃっておられます。
 最近の国家予算のなかで医療費の高騰ぶりに驚かされます。日本社会は、まさしく老人社会に突入したことの証拠であるに違いありません。人間の寿命がのびることは、それを可能にするための力が、その社会ににあることでしょうが、それは同時に、いまだかつてない高齢化社会をいかに機能させていくか、という大問題を抱えることになります。世界の各国が注目しているところであります。
 さて、人間が高齢化すること、それを長期間にわたること、そこには誰でもが遭遇そうぐうすることは病気であるに違いありません。それは身体的にも、精神的にもわたるものであります。
 お大師さまも、病気には身病と心病とに分け、身病多しといえども要は唯し六つのみ、四大鬼業これなり。心病おおしといえども本は唯し一つのみ、いわゆる無明これなり」としておられます。そして、身病には湯散丸酒、針灸、呪禁をもって除き、心病には仏教の教え、即ち五藏をもって療すべきと述べておられます。お大師さまは、病気の弟子に対して、「頭痛及び舌のただるは熱の候なり。呵気かき(息をゆるやかにする)を用いて治すれば、則ち除くなり。また冷熱調ととのはざるは、 薑豉湯 きょうしとうを服せば除郤のぞくことを得ん。よって母薑ぼきょう呵梨勒かりろく等の薬を送る。早く湯となしてこれを服せよ」と実に具体的な指示をされておられます。薑豉 湯とはしょうがと味噌の薬湯。母薑とは生しょうがの根。豉とは味噌、呵梨勒とは薬となる果実のことであります。
 当時の最良の処方だったのでしょう。



六大新報 第四三九一号 掲載



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