諸の弟子らに語(つ)ぐ。
およそ出家修道はもと仏果を期す。
あにいわんや人間(じんかん)少々の果をや。

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お大師様のことば お大師様のことば

お大師様のことば(五十六)

大正大学名誉教授・種智院大学客員教授
智山専修学院長・東京成就院長老
福田 亮成



私は無常というものの迅速さを、これほどリアルに、そして端的に述べた言葉を知りません。
  私が仏教を勉強しだして大分たち、仏教が少しわかったような気になっていたある時、私にはまったく信心という世界が欠如していることを思い知らされることがありました。
  ある講演会に参加した折、講師のお一人が開口一番、ここにいる人々は、すべて今晩十二時に死ぬ、そんな気持ちで聞いてもらいたい、と。この言葉は強く心に響いてきて、講演を聴聞するどころではなかったという経験があります。この言葉は今でも私の耳に鳴り響いており消えることはありません。今晩十二時ということは、文字通り今晩なのか、三十年後の今晩十二時なのか、どのような人々にも今晩十二時はやって参ります。私の仏教信心の原点は実にここにあります。
  後になって、今晩十二時のことは、解脱上人のお言葉だということがわかりました。『一言芳談いちごんほうだん』という書物にありました。
  解脱上人云く、「一年三百六十五日は、みな無常にしたがふべき也。しかれば、日夜十二刻は、しかしながら、終焉しゅうえんのきざみと思ふべし」。
  解脱上人げだつしょうにんとは、貞慶じょうけい(一一五五~一二一三)のことで、平安末から鎌倉初期にかけて法相宗と戒律の興隆に尽くされた、南都仏教を代表する学僧であります。さらには専修念仏停止せんじゅうねんぶつていしをうったえた「興福寺奏上こうふくじそうじょう」を起草したり『唯識同学鈔』という大著、『愚迷発心集』、種々なる講式を執筆していて、仏教の民衆化に努力した方でありました。そんな活躍の底に、今夜十二時が意識されていたこと。お大師さまは、即身成仏という答えを用意していただいております。ありがたいことです。



六大新報 第四三二一号 掲載



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