諸の弟子らに語(つ)ぐ。
およそ出家修道はもと仏果を期す。
あにいわんや人間(じんかん)少々の果をや。

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お大師様のことば お大師様のことば

お大師様のことば(五十五)

大正大学名誉教授・種智院大学客員教授
智山専修学院長・東京成就院長老
福田 亮成



 輪廻転生りんねてんしょうの思想は、仏教と共に日本に伝来しました。しかし、今を生きる人びとの意識の中には、全くと言ってよいほど輪廻の考え方は薄れてしまっているといっても過言ではありません。仏教がいう解脱とは、まさしくその輪廻からの脱出ということでありまして、実にリアルではありませんか。私の母は新潟の頸城くびき山系の中の村の出身でありますが、子供の頃、食事をしてすぐに身体を横にすると、牛になると厳しく注意されたことを思い出します。
  三・一一の東日本地震による大津波の光景は、現在ただ今の地獄の恐ろしさを連想させるものでありました。地獄の有り様は架空なものでなく、現実社会にはもっと恐ろしい現象が展開しているのです。原発事故は、いまだに収拾されることなく、まったく改善の余地も見い出せないでいますが、これこそ地獄でなくてなんでしょう。
  この言葉は、前世において多くの善行を行じたからこそ、今、人間としての生をうけているのであります。よってこの生涯のうちに善行を行わなければ、再び地獄に転落してしまう、と。実に人間というもののきわどさをいったものでありましょう。
  悪い行為をすれば、必ず地獄に墜ちる、という人間が生きることの基本的なタガがはずれてしまっている昨今、六道輪廻の思想が新めて想起されるべきでありましょう。
  お大師さまは、『十住心論』の第一住心におきまして「地獄趣じごくしゅ」について詳細に述べております。第十秘密荘厳住心に至る第一歩として、地獄の観念があることを考えてみる必要があると思います。



六大新報 第四三一九号 掲載



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