諸の弟子らに語(つ)ぐ。
およそ出家修道はもと仏果を期す。
あにいわんや人間(じんかん)少々の果をや。

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お大師様のことば お大師様のことば

お大師様のことば(五十二)

大正大学名誉教授・種智院大学客員教授
智山専修学院長・東京成就院長老
福田 亮成



 これは、お大師さま四十歳の弘仁四年(八一三)仲夏晦日の記のある、いうところの弘仁の遺誡ゆいかいの一文であります。そして、「我が教誡に違うはすなわち諸仏の教えに違うなり。長く苦海に沈んで何れの時にか脱るることを得ん。また永く共に住して語らず。往き去れ住することなかれ、往き去れ、住することなかれ」というように大変きびしい叱咤しったの言葉で結ばれています。
  まもるべき戒について、「必ず須らく顕密の二戒堅固に受持して、清浄にして犯なかるべし」とし、三帰、八戒、五戒、声聞、菩薩等の顕戒。比丘、比丘尼等に各々の戒があることをつげ、密戒とは三摩耶戒さんまやかいのことだとする。しかし、これらの諸戒は、身三、口四、意三の十善戒にほかならず、それら十に開いたものを一つにまとめれば、一心となり。「一心の性は仏と異なることなし」とし、さらにその一心は、我心、衆生心、仏心に差別なしとし、この心に住すれば、仏道を修することになるとしている。「これらの戒を奉行ぶぎょうして精しく本尊の三摩地さんまじを修し、速かに三妄執さんもうじゅう を超えて、 く三菩提を証し、二利を円満し、四恩しおん抜済ばっさいすべし」とし、その人こそが菩提薩埵ぼだいさったその人であるといっている。
  この遺誡の対象は、文中に近円ごんえん(具足戒を受けたもの)・求寂ぐじゃく(十善戒を受けたもの)・近事ごんじ (五戒を受けた在家のもの)・童子(出家を願い、比丘に侍従するもの)等であった。
  この遺誡の書かれた前年の弘仁三年十二月十二日に高雄山寺に開壇かいだんされた胎蔵たいぞう潅頂かんじょうの合計一百四十五人の中に、大僧・沙弥・近事・童子があげられていますが、この遺誡と共に初期真言教団のすがたを見ることができる。



六大新報 第四三一一号 掲載



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