天長5(828)年、弘法大師空海によって創設された「綜芸種智院」は、貴族・僧侶のみならず、一般の民衆に広く門戸を開いた日本初の私学として、日本教育史上、特筆すべきものであった。ここでは、身分の高低・老若を問わず広範な民衆を対象に、
仏教・儒教・道教等の学問や、医学・薬術・工芸等の処世の学も取り入れた幅広い教育活動が行われた。その教育理念は、社会的地位や職業の差別なく、全ての人に等しく備わる仏性を、教育によって覚知させるという仏教的平等観に基づくものであった。さらに設立の建白書である「綜芸種智院式並序」において、「物の興廃は必ず人に由り、人の昇沈は定んで道に在り」と述べ、良き国・良き社会の創出の為には優れた人材の育成が不可欠であるという教育の大義を説いている。
然るに約1200年の歳月を経た今日、我々は、若年層による凶悪犯罪の増加や幼児虐待、高齢者間の殺人等、未曾有の社会的・道徳的危機に直面している。
仏教は、人間が生まれ、老い、病み、死んでゆくというプロセスを通じて、生命の尊厳を認識してゆく哲学体系を持つ。これは長く我が国の文化の底流に受け継がれてきた我々の精神的ルーツでもある。
20世紀から21世紀へと移行し、価値観、倫理観が大きく変わろうとしている時代の転換期に際して、仏教の精神に基づく先人の智慧を学び再認識する様々な機会の提供を通じて、青少年の健全な育成を図ると共に、生まれてきたすべての人々が互いの生命を尊重し、誇りをもって生き、心豊かに老い、尊厳ある死を迎えることができる社会の実現を目指し、ここに 特定非営利活動法人Samayaプロジェクト21 を設立する。
平成21年 4月 21日
特定非営利活動法人 Samayaプロジェクト21
理 事 長 立 部 祐 道